アセルカデ

定期演奏会
曲目解説コーナー
第35回定期演奏会
¶第35回定期演奏会 曲目解説
第1回 ブルッフ《ヴァイオリン協奏曲第1番》
ドイツの作曲家マックス・ブルッフといえば、まず名前が挙がるのが《ヴァイオリン協奏曲第1番》と《スコットランド幻想曲》。
実は交響曲が3曲、ヴァイオリン協奏曲も“第1番”とある通り第2番・第3番まであるのですが、どうしても第1番の人気が圧倒的です。本人は「ほかにも色々書いているのに…」と複雑な気持ちだったとか。
とはいえ、この第1番が名曲として愛され続ける理由は明らかです。
作曲の過程で名ヴァイオリニストのヨアヒムから助言を受けながら練り上げられ、ヴァイオリンの“歌う力”が最大限に引き出された作品になりました。情熱的な序奏、深い歌の第2楽章、そして民族舞曲風の華やかな終楽章まで、どこを切っても魅力があふれています。
ちなみに筆者は、以前テレビで《ヴァイオリン協奏曲第2番》を聴いたことがありますが、少し淡々としていて印象が薄かった記憶があります。その点、第1番はブルッフの魅力がぎゅっと凝縮された“これぞ名曲”という存在感。「ブルッフといえばこれ」と言われるのも納得です。
今回の演奏会では、松本蘭さんの独奏でお届けします。
ヴァイオリンが自在に歌い、オーケストラと対話し、最後は爽快に駆け抜けるこの協奏曲。どうぞ心ゆくまでお楽しみください。
第34回定期演奏会
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第1回「ペールギュント」の朝は北欧じゃない
さてはじまりました川フィル定演の曲目解説。
これから演奏会までの間、少しづつライトな曲目解説を載せていきますので、お付き合いください。
記念すべき第1回はペールギュント組曲から「朝」を取り上げます。
誰もが耳にしたことがある、フルートのメロディから始まる、まさにさわやかな朝という趣きの一曲。
作曲者のグリーグがノルウェー出身ということもあり北欧情緒満点です。
しかし、この曲は実はペールギュントが旅先のサハラ砂漠で朝を迎えたシーンのBGMでした。
ここはペールギュントが故郷に想いを馳せる場面なのです。
スカンジナビアの朝を想起させる曲調は風景描写ではなく心象風景、というわけで、北欧っぽい!と思った方は間違いではないです。
ノルウェーの文豪イプセンの戯曲「ペールギュント」の劇音楽から抜粋したこの組曲は多彩な表情の魅力的な4曲で構成されています。
演奏会では多彩な表情をお伝え出来るように練習を頑張りたいと思います。
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第2回 チャイコフスキーの振幅(音量記号について)
皆さまは学校の音楽の授業で楽譜の音量記号というものを習われたと思います。
小さいほうから、
pp (ピアニシモ) < p (ピアノ) < mp (メゾピアノ) < mf (メゾフォルテ) < f (フォルテ) < ff (フォルティシモ)
というアレです。
では、fff や ppp のように3つ以上並ぶ場合の読み方をご存じでしょうか?
正解は fff =フォルティシシモ、ppp =ピアニシシモ。
さらに一つ増えると ffff =フォルティシシシモ、pppp =ピアニシシシモになります。
この音量記号の使い方がとてもユニークなのがチャイコフスキーという作曲家です。
例えばベートーヴェンであれば楽譜上の音量記号は pp から ff で収まっていますが、今回取り上げるチャイコフスキー交響曲第5番では、最大で ffff から最小で pppp まで幅広い音量記号が用いられています。
ロマンティックなメロディーや金管群の咆哮などドラマティックなシンフォニーですが、楽譜をよく読むと、意外なところで ffff や pppp が使われています。
皆さまは、どこが ffff でどこが pppp なのか耳を澄まして想像してみてください(我々はそう聞こえるように頑張らなくてはいけないですね…)。
¶第34回定期演奏会 曲目解説
第3回 「チャイ5」の終わりは ♩♩♩♩(タタタタン)です
コロナ禍が終息し、演奏会にブラボーの声が帰ってきました。
演奏する側としても、大変気分の良いもので、嬉しく思います。
一方で、フライング拍手、フライングブラボーが散見されるようになってきました(※フライング=陸上や水泳などのルール違反のスタートの意)。
曲の余韻をかき消すように拍手やブラボーの声が起きてしまう現象のことです。
今回取り上げるチャイコフスキーの交響曲第5番(チャイ5)には罠があって、我々もヒヤヒヤしています。
第4楽章(終楽章)で一旦華々しく終わったよう見せかけた後に、コーダと呼ばれる終結部分が続くのです。
とあるプロオーケストラの地方公演で、コーダに入る前にブラボーがかかったことがあったそうです。
発声した本人は気まずいことこの上ないでしょうし、聴衆や演奏者のガッカリは察するに余りがあります。
チャイ5の終わりは ♩♩♩♩ (タタタタン)という音型です。
一人のウッカリが皆のガッカリになってしまわないよう、是非覚えておいてください。
なお、交響曲や組曲など連続して演奏される作品の場合、楽章・曲間では基本的に拍手・ブラボーはいただかなくても大丈夫です。
先に拍手したりブラボーした人が偉いとかいうことは一切ありません。
指揮者の手が下りるまでの余韻を味わってくださったなら演奏する側として、これに勝る喜びはありません。
クラシックコンサートに馴染みのない皆さまには、拍手やブラボーしない勇気を持っていただけたらと思います(曲を知っている人が拍手してくれるので…)。